亡くなった家族のApple ID・iCloudはどうなる?写真を見る方法と削除の手続き【行政書士解説】

故人のApple ID・iCloudのデータを家族が確認する方法

ご家族が亡くなったあと、「iPhoneに入っている写真を見たい」「iCloudに保存されたデータを残したい」「Apple IDをこのままにしておいていいのか」と迷っていませんか。iPhoneはパスコードが分からないと開けず、Appleもパスコードを解除することはできません。手がかりになるのが、Appleの「デジタル遺産プログラム」です。

この記事では、Appleの公式サポートの案内をもとに、故人のApple ID(Apple Account)とiCloudのデータを家族が見る方法、日本で必要な書類、アカウントを削除する方法、iPhoneを再利用するときの注意点を整理します。なお、Apple IDは現在「Apple Account」という名前に変わっています。

この記事のポイント

  • 故人が「故人アカウント管理連絡先」を指定していれば、その人がiCloudの写真やメモなどにアクセスできる
  • 申請には「アクセスキー」と、日本では死亡の記載がある戸籍謄本が必要
  • アクセスできるのは承認から3年間。その後、故人のアカウントは完全に削除される
  • 指定がない場合、データへのアクセスは原則として裁判所命令などが必要でハードルが高い。アカウントの削除は家族が申請できる

基本知識:故人のiPhoneとiCloudはどうなるのか

Appleでも、iPhoneのパスコードは解除できない

iPhoneやiPadは、パスコードで暗号化されて守られています。Appleは、デバイスを消去しない限り、パスコードの解除は手伝えないとしています。端末を消去すると、端末の中にだけ保存されていた写真やデータは消えてしまいます。パスコードが分からない場合でも、慌てて初期化しないでください。

一方で、iCloudに保存されていたデータは、次に説明する「デジタル遺産プログラム」を使えば、家族が取り出せる場合があります。

家族が取れる3つの道

状況できること主に必要なもの
故人が「故人アカウント管理連絡先」を指定していたiCloudのデータ(写真、メッセージ、メモ、ファイル、バックアップなど)にアクセスできるアクセスキー、死亡の記載がある戸籍謄本
指定がないデータへのアクセスは、原則として裁判所命令などが必要。日本では代わりの書類や手続きが認められる場合もあるAppleサポートに相談
データはいらないので、アカウントを消したい故人のApple Accountとデータの完全削除を申請できる申請者自身のApple Account、法的書類(日本では戸籍謄本の場合あり)

故人アカウント管理連絡先とは

故人アカウント管理連絡先は、Appleユーザーが「自分が亡くなったら、この人にデータを見られるようにする」と生前に指定しておく人です。複数の人を指定でき、指定された人はApple Accountを持っていなくてもかまいません。申請する時点で13歳以上であることが必要です(国や地域によって異なる場合があります)。

アクセスできるデータアクセスできないデータ
写真故人のApple Accountで購入した映画、音楽、ブック
メッセージサブスクリプション
メモ、ファイルiCloudキーチェーンに保管されたお支払い情報
デバイスのバックアップ などパスワード、パスキー

故人アカウント管理連絡先が複数いる場合は、どの人もデータを完全に削除するといった決定ができます。誰かが先に削除してしまうと取り戻せないため、指定された人同士で話し合ってから進めましょう。

手順1:アクセスキーを探す

故人アカウント管理連絡先として申請するには、「アクセスキー」が必要です。アクセスキーは、故人が連絡先を指定したときに作られ、次のような形で手元に届いていることがあります。

  • あなたのiPhoneなどの「Apple Account」の設定に保存されている(故人がメッセージで送った場合)
  • 故人からプリントした控えを受け取っている
  • エンディングノートや遺言書など、故人の書類と一緒に保管されている

あなたのiPhoneでは、[設定]→[自分の名前]→[サインインとセキュリティ]→[故人アカウント管理連絡先]の画面を確認してみましょう。

手順2:Appleの「デジタル遺産」サイトから申請する

アクセスキーが見つかったら、Appleの「デジタル遺産」ウェブサイト、またはiPhone・iPad・Macの設定から申請します。

用意するもの内容
アクセスキー故人が指定時に作成したもの
死亡を確認できる書類日本では死亡証明書ではなく、アカウント所有者の死亡の記載がある戸籍謄本が必要(場合あり)
書類のデータPDF、PNG、TIF、JPEG、GIFのいずれか。300dpi以上、または3300×2550ピクセル以上

Appleが審査し、承認されると確認メールが届き、故人のデータにアクセスするための特別なApple Accountが知らされます。このとき、次のことが起こります。

  • 故人のもとのApple Accountは使えなくなる
  • そのApple Accountが使われていたすべてのデバイスで、アクティベーションロックが解除される
  • データにはiCloud.comから、または特別なApple Accountでサインインしたデバイスからアクセスできる

アクセスできるのは「3年間」だけ

故人のアカウントにアクセスできるのは、申請がはじめて承認された日から3年間です。それを過ぎると、故人のアカウントは完全に削除されます。写真など残したいデータは、早めにダウンロードしておきましょう。

故人アカウント管理連絡先がいない場合

指定がない場合、故人のApple Accountのデータを見るのは簡単ではありません。Appleは、米国などでは裁判所命令があればアクセスを申請できるとし、日本やフランス、ドイツなど一部の国では、裁判所命令の代わりになる書類や手続きが認められているとしています。申請できるのは1人だけで、一部のデータはエンドツーエンドで暗号化されているため、故人のデバイスのパスコードの入力を求められることもあります。

具体的な書類はケースによって変わるため、まずはAppleサポートに問い合わせて、必要なものを確認しましょう。

また、iCloudを使っていなかった場合、写真などは故人のiPhone本体にしか残っていない可能性があります。スマホが開かないときの考え方は、亡くなった親のスマホが開かないときの対処法で説明しています。

アカウントを削除したい場合・iPhoneを使いたい場合

Apple Accountの削除を申請する

データはいらないので、故人のApple Accountを消したい場合は、Appleの「デジタル遺産」ウェブサイトから削除を申請できます。申請には申請する人自身のApple Account(なければ作成)と、削除したい故人のApple Account、お住まいの国で必要とされる法的書類が必要です。日本では、死亡の記載がある戸籍謄本を求められる場合があります。

故人のiPhoneを家族が使うには

故人のiPhoneを家族が使うには、故人のApple Accountにひもづくアクティベーションロックを外す必要があります。故人アカウント管理連絡先としてのアクセス申請か、アカウントの削除申請が承認されると、アクティベーションロックは自動的に解除されます。そのあと、iPhoneを消去・復元し、ご自身のApple Accountでサインインします。

消去すると端末の中のデータは消えます。残したい写真がないかを先に確かめてから進めましょう。

Appleのサブスクリプションの請求に注意

iCloud+やApple Musicなどのサブスクリプションは、手続きをしないと請求が続くことがあります。支払いに使われていたクレジットカードの手続きとあわせて確認しましょう。詳しくは故人のクレジットカードの引き落としを止める方法やNetflix・Amazonプライムの解約も参考にしてください。

生前にできる備え:故人アカウント管理連絡先を設定する

ご自身や、ご両親のiPhoneでは、元気なうちに故人アカウント管理連絡先を設定しておけます。設定しておくだけで、残された家族の負担が大きく変わります。

ステップ操作(iPhone・iPad)
1[設定]→[自分の名前]→[サインインとセキュリティ]を開く
2[故人アカウント管理連絡先]→[故人アカウント管理連絡先を追加]をタップする
3ファミリー共有のメンバー、または連絡先から指定する人を選ぶ
4作成されたアクセスキーを、メッセージで送るか、プリントして渡す

Macの場合は、[システム設定]→[自分の名前]→[サインインとセキュリティ]から設定します。アクセスキーをプリントした場合は、エンディングノートなど、家族が見つけられる場所に保管しておきましょう。

具体的なトラブル事例(一般化した事例です)

iPhoneを初期化して、写真がすべて消えた

父親のiPhoneを母親が使えるようにしようと考えたKさんは、ショップで相談したうえで端末を初期化しました。ところが父親はiCloudの写真の同期をオンにしておらず、孫の写真は端末の中にしかありませんでした。初期化したあとでは、取り戻す方法はありませんでした。

3年の期限を知らず、データが消えていた

母親の故人アカウント管理連絡先に指定されていたLさんは、申請が承認されたあと、少しずつ写真を見返していました。忙しさから全部をダウンロードしないままでいたところ、承認から3年がたち、母親のアカウントは完全に削除されていました。

専門家に相談すべきケース

Appleの手続きそのものは、ご家族だけで進められます。次のような場合は、専門家に相談すると全体の見通しが立てやすくなります。

こんなとき相談先
戸籍謄本の取り寄せや、ほかのアカウント・契約の整理まで手が回らない行政書士(戸籍の収集、デジタル遺品の棚卸し、相続手続き全体の整理)
故人アカウント管理連絡先がなく、裁判所の手続きが必要になりそう弁護士
相続人の間で、データの扱いについて意見が対立している弁護士

見送ったあとの手続きと、これからの備え

ご家族を亡くされたあとの手続きは、ひとりで抱えるには多すぎます。いまのお困りごとと、この先の備え。どちらからでもご相談いただけます。

いま、手続きで手が止まっている方へ

スマホやネットのアカウント、解約できていない契約、相続に必要な書類。状況をうかがい、何から手をつければよいかを一緒に整理します。

※パスコードの解析やロック解除、Appleへの代理申請は行っていません。登記・税務・相続トラブルは、提携する各専門家へおつなぎします。

残されたお母さま・お父さまのために

今回の手続きで苦労したことは、次に備えておけることでもあります。実家のこと、お金のこと、スマホの中身。親御さんがお元気なうちに、決まっていることと手つかずのことを確かめておきませんか。

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クロフネ行政書士事務所|行政書士・宅地建物取引士 深沢文敏

よくある質問

Q. 故人のiPhoneのパスコードを、Appleに解除してもらえますか?

A. できません。Appleは、デバイスを消去しない限りパスコードの解除は手伝えないとしています。消去すると端末内のデータは消えるため、慌てて初期化しないでください。

Q. 日本では、どんな書類が必要ですか?

A. Appleは、日本では死亡証明書ではなく、アカウント所有者の死亡の記載がある戸籍謄本が必要になる場合があるとしています。故人アカウント管理連絡先として申請する場合は、これに加えてアクセスキーが必要です。

Q. 故人が買った音楽や映画、アプリは引き継げますか?

A. 引き継げません。故人のApple Accountで購入した映画、音楽、ブック、サブスクリプションは、故人アカウント管理連絡先でもアクセスできない対象とされています。

Q. 故人のパスワードを知りたいのですが、分かりますか?

A. iCloudキーチェーンに保管されたパスワードやパスキー、お支払い情報は、故人アカウント管理連絡先でもアクセスできません。ほかのサービスの手続きは、それぞれのサービスの相続窓口で進めます。

Q. 故人アカウント管理連絡先がいるかどうか、どうすれば分かりますか?

A. 故人がメッセージでアクセスキーを送っていた場合、指定された人のApple Accountの設定に保存されていることがあります。ご家族それぞれが、自分のiPhoneの[設定]→[自分の名前]→[サインインとセキュリティ]→[故人アカウント管理連絡先]を確認してみましょう。プリントで渡されている場合もあるため、故人の書類も探してみてください。

まとめ

故人のiPhoneはパスコードが分からないと開けず、Appleも解除できません。iCloudのデータを家族が見られるかどうかは、故人が故人アカウント管理連絡先を指定していたかどうかで大きく変わります。指定があれば、アクセスキーと死亡の記載がある戸籍謄本で申請でき、承認から3年間データにアクセスできます。指定がなければ、アクセスのハードルは高くなりますが、アカウントの削除は申請できます。

iPhoneを初期化する前に、残したい写真がないかを必ず確認しましょう。故人のアカウントや契約の手続き全体は、故人のアカウント・デジタル遺品の手続きまとめで確認できます。Googleアカウントの場合は故人のGoogleアカウントの削除・引き継ぎをご覧ください。

深沢文敏・家族資産コンシェルジュ・行政書士・宅地建物取引士

AUTHOR

深沢 文敏

家族資産コンシェルジュ|行政書士(登録番号 第14130403号)・宅地建物取引士
クロフネ行政書士事務所 代表/さいたま市大宮区

📰 メディア掲載 50媒体超 📚 著書 3冊 🏠 郡山居住・不動産所有経験あり

一部上場企業を退職後、行政書士として独立。法務書類の作成権限を持つ行政書士と、不動産売買を媒介できる宅地建物取引士の両資格を保有。郡山市(開成・鶴見坦エリア)に居住し、マンションを所有していた経験から、地方都市の不動産が抱える課題を現場感覚で把握している。日本経済新聞・朝日新聞・NewsPicks・TBS NEWS DIGほか50媒体超に掲載。

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