遺品処分の同意書、書き方と文例|兄弟の同意はどこまで必要か

親の遺品を片付けるにあたって、兄弟に同意書を書いてもらうことにした。ただ、何をどう書けばいいのか分からない。そんな方へ。
同意書は「何に同意したか」を特定する書面です。家じゅうの物をまとめて「自由に処分してよい」と書くのではなく、品目を特定し、処分しない物を明記します。この2つが入っているかどうかで、書面の意味が変わります。
この記事では、同意書に書く7つの項目と、そのまま書き写せる文例をご案内します。あわせて、書いてはいけない表現も3つ挙げます。
なお本記事は、親が亡くなった後、相続人が複数いるご家庭で家財を整理する場面を想定しています。遺言の有無、遺産分割の結果、相続放棄などにより、確認すべき相手は変わります。兄弟姉妹だけでなく、存命の配偶者や代襲相続人も対象になる場合があります。
相続放棄・限定承認をお考えの方は、署名の前にお読みください。
相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされる場合があります(民法921条1号)。保存行為などの例外はありますが、「古い物だから」「家族全員が同意したから」という理由だけで安全とは判断できません。処分を伴う書面への署名も含め、先にご確認ください。
相続放棄の申述期間は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。家庭裁判所による期間伸長の制度もあります。裁判所の相続放棄の案内もご確認ください。
AUTHOR
深沢 文敏(ふかさわ ふみとし)
クロフネ行政書士事務所 代表。行政書士(埼玉県行政書士会)・宅地建物取引士(埼玉県知事登録)。埼玉県さいたま市大宮を拠点に、首都圏にお住まいで地方に実家があるご家族の「実家と親のこと」の交通整理を行っています。ご家族の話し合いに中立の立場で同席し、必要な専門家へおつなぎするのが役割です。
同意書でできること、できないこと
書き方に入る前に、この書面の守備範囲をはっきりさせておきます。ここを取り違えたまま作ると、必要のない不安を持ったり、逆に安心しすぎたりします。
| 書面 | 決まること | 決まらないこと |
|---|---|---|
| 遺品処分の同意書 | 特定した品を、誰が、どの方法で処分することに同意したか | 業者と契約できる人、遺産全体の分け方、費用の負担割合 |
| 遺品整理の委任状 | 誰にどこまでの事務・代理権限を任せるか | 他の相続人の同意、対象外の財産の処分 |
| 遺産分割協議書 | 相続人の間で遺産をどう分けるか | 業者との契約条件、作業の手順 |
同意書に署名をもらっても、それだけで家財に関する新しい権限が生まれるわけではありません。記録を残すための書面だとお考えください。
亡くなった方の家財は、相続開始と同時に相続人全員の共有になります(民法898条)。共有物については、変更にあたる行為と管理・保存にあたる行為で適用されるルールが異なります。本記事では、廃棄する品ごとに、必要な権利者の明示的な同意を確認する運用をご案内します。すべての片付け行為に一律で全員の署名が要る、という意味ではありません。
根拠:民法251条・252条・898条(e-Gov法令検索)
書き始める前に決める3つのこと
いきなり文面を書くと、必ず曖昧になります。先に3つ決めてください。
その1 誰に署名してもらうか。続柄の記載だけでは相続人は確定しません。戸籍や遺言も確認します。相続放棄済みの方を、当然に相続人として扱わないでください。
その2 何を対象にするか。部屋ごとに写真を撮り、品目に番号を付けます。「送った写真」のような書き方では特定できません。作成日と版番号を付けてください。
その3 何を対象から外すか。ここが最も重要です。次章で詳しく説明します。
同意書に書く7つの項目
| 記入項目 | 書く内容と注意点 |
|---|---|
| ① 故人と対象の実家 | 故人の氏名・死亡日、実家の所在地。物置や別棟を含むなら範囲も書く |
| ② 同意する人 | 住所・氏名・故人との続柄。相続人の確定は戸籍等で別途確認する |
| ③ 作業を担当する人 | 家族の氏名。業者が決まっていれば名称。業者と契約する権限は別に確認 |
| ④ 確認した資料 | 一覧の作成日・版番号と写真番号。ここを省くと対象が特定できない |
| ⑤ 同意する品と方法 | 品目番号を使い「廃棄」「保留」を区別。売却・贈与は廃棄の同意に含めない |
| ⑥ 除外する物 | 価値ある品、価値不明の品、重要書類、祭祀財産、他人の所有物、未確認の品 |
| ⑦ 署名日と控え | 内容を確定してから署名。同意書・一覧・写真を一組で保存する |
なぜ価値ある物を除外するのか(第4項)
古い時計や着物は、見た目だけでは価値が分かりません。通帳や契約書は、売れる品ではありませんが財産調査に必要です。
分からない物を処分対象から外しておくことで、片付けの途中で財産や手続きの資料が失われるのを防げます。取扱いが決まるまで保留し、必要に応じて権利者や専門家に確認してください。
この一文があると、署名する側も安心します。「何を処分しないか」が書いてあるかどうかで、署名のハードルは大きく変わります。
なぜ仏壇や位牌を除外するのか(第5項)
民法897条は、系譜・祭具・墳墓について、通常の相続とは別の承継ルールを定めています。仏壇・位牌・墓は遺産分割の対象外で、承継するのは祭祀承継者です。
つまり、「兄弟全員が署名したから処分してよい」とは一律に判断できません。一般の家具と同じ枠で扱わないために、明示的に除外します。
そのまま使える文例
[ ]を埋め、不要な空欄は斜線で消してからお使いください。売却や贈与は含めず、一覧で特定した品の廃棄に対象を絞っています。
遺品の整理及び処分に関する同意書
被相続人[氏名]([年月日]死亡)の相続人である私は、次の内容を確認し、同意します。
1 作業者と対象場所
整理作業は[作業者氏名]が行い、対象は[実家の所在地・部屋等]とします。
2 確認した資料
私は、[作成日・版番号]の「残置希望確認リスト」および対応する写真[番号・共有日]を確認しました。
3 同意する品と処分方法
私は、別紙リストの「廃棄同意」欄に私が同意の意思を明示した品について、別紙記載の方法で処分することに同意します。私が回答しなかった品、保留とした品、および一覧に記載のない品は、処分の対象とせず保留します。売却・贈与は含みません。
4 価値ある物と重要書類の除外
現金、貴金属、有価証券、価値の判断がつかない品、通帳、権利証、契約書等は対象外とします。新たに見つかった場合も作業を止め、写真と所在を共有し、取扱いを別途確認します。
5 祭祀財産の除外
仏壇・位牌等の祭祀財産は対象外とし、承継者と権限を確認して別途取り扱います。
6 保留と変更
対象品や作業方法を変更する場合は、実施前に改めて確認します。本書は、対象外の財産に関する権利の放棄、遺産分割、費用負担の合意を意味するものではありません。
作成日 令和 年 月 日
住 所
氏 名 ㊞
被相続人との続柄
相続人の人数分を作成し、各自が1通ずつ保管します。第3項の「回答しなかった品は保留」という一文が、この書面の要です。理由は次章で説明します。
書いてはいけない3つの表現
| 避けたい表現 | 問題点 | 書き換え方 |
|---|---|---|
| 期限までに返事がなければ処分します | 一方的な通知だけでは、処分への同意を得たとはいえない | 期限は回答の目安とし、未回答の品は保留する |
| 家の中の物はすべて自由に処分してよい | 価値不明の品や他人の所有物まで含めてしまうおそれがある | 品目番号と処分方法を特定し、除外品を明記する |
| 一切異議を述べず、すべての責任を免除する | 対象外の品の処分まで解決できるとは限らない | 同意した対象と方法を明記し、変更時は再確認する |
1つ目が最も多い誤りです。「期限を切れば同意とみなせる」という考え方は、書面にしても通りません。期限は日程を調整するためのもので、無回答を同意に変えるものではありません。
代わりに、未回答の品は保留にします。保留にすると片付けは進まないように見えますが、合意できた品から着手できるので、実際には止まりません。
立ち会えない人の承諾を、LINEやメールで取ってもよいか
全員が実家に集まって署名する。理想ですが、遠方に住むご家族がいれば現実的ではありません。
結論から言えば、LINEやメールでのやり取りも記録として機能します。ただし、そのまま残しておくだけでは不十分です。何を、どういう形で残すかで、後の意味が変わります。
「いいよ」の一言では足りない理由
メッセージのやり取りで一番多いのが、これです。
「実家の片付け、進めていい?」
「いいよ、任せる」
半年後に問題になったとき、この2行から分かるのは「片付けに反対していなかった」ことだけです。何を処分してよいと言ったのかは、どこにも残っていません。
「食器は捨てていいが、アルバムは残してほしかった」。後から出てくるのは、たいていこの種の話です。同意の有無ではなく、同意の範囲が争点になります。
記録として機能させる3つの条件
条件1 対象が特定されていること。「片付け」ではなく「別紙リストの01〜18」のように、何を指すかが分かる形で送ります。リストに作成日と版番号を入れてください。
条件2 相手が確認できる状態で送っていること。写真とリストを先に送り、質問できる時間を置きます。送った直後に「じゃあ進めるね」では、確認の機会があったとは言えません。
条件3 返事が三択で返ってきていること。「廃棄に同意」「残してほしい」「まだ決められない」。この形で返してもらえば、範囲がそのまま記録になります。
3つとも満たしていれば、署名入りの書面がなくても、何にどう同意したのかを示せる状態になります。
そのまま使える送信文
実家の片付けを少しずつ進めたいと思っています。
[作成日・版番号]のリストと、部屋ごとの写真を送ります。
番号を付けた品について、「処分してよい」「残したい」「まだ決められない」のどれかで返事をもらえると助かります。
[日付]までに一度確認したいのですが、返事のない品や意見が分かれた品は、処分せず保留します。急がせるつもりはありません。
貴金属や通帳など価値のありそうなものは、処分の対象に入れていません。仏壇と位牌も別に扱います。
最後の2行が効きます。「何を処分しないか」を先に伝えると、受け取った側の警戒が下がります。
やり取りの保存方法
- スクリーンショットを撮る。日付が表示された状態で。LINEはアカウント削除やトーク履歴の消失でやり取りごと失われることがあります
- 送ったリストと写真も一緒に保存する。返事だけ残っていても、何に対する返事か分かりません
- 作業後の写真も残す。処分前と処分後の両方があると、経過を説明できます
- 一覧を差し替えない。追加の品が出たら、新しい版番号で送り直してください
なお、期限を過ぎたことだけを理由に処分しないでください。一方的な通知は、同意を得たことにはなりません。未回答の品は保留にしたまま、合意できた品から進めれば、片付け自体は止まりません。
本記事の同意書は、こうしたやり取りを経たうえで最後に一枚残すものです。署名をもらうことより、先に同じものを見て判断できる状態をつくるほうが大切です。
送る前と署名後に確認すること
- 署名する人が、その品について判断できる立場かを確認する
- 写真と一覧を先に共有し、質問できる時間を確保する
- 署名後に一覧を差し替えない。追加の品が出たら新しい版で再確認する
- 作業者と署名者が同じ資料一式の控えを持つ。紙の原本の保管者も決める
- 費用の支払者・負担割合・上限額は別に合意する。同意書の署名だけで費用負担まで決まったとは扱わない
家族の間で合意ができていない、本人が内容を理解して意思表示できるか分からない、未成年者と親の利益が対立するといった場合は、この書式をそのまま使わず、専門家にご確認ください。
よくあるご質問
手書きでなければいけませんか
全文を手書きする必要はありません。パソコンで作成し、内容を確認して署名する形で構いません。大切なのは、誰がどの資料に同意したかが残ることです。
実印や印鑑証明書は必要ですか
家族間の家財処分についての同意書に、実印と印鑑証明書が一律に必要というものではありません。ただし業者へ提出する場合は、その業者の要件をご確認ください。押印や署名があることで、内容の適法性まで保証されるわけではありません。
署名した書面を写真で送ってもらえますか
内容確認の資料にはなりますが、写真だけで本人性が常に証明できるわけではありません。全ページと対応する一覧が読める状態で保存し、原本はご本人が保管するか、必要に応じて郵送してもらってください。
兄弟が返事をくれないときは処分してよいですか
返事がないことを同意とはみなさず、その方の同意が必要な品は保留します。連絡を試みた記録を残し、期限が迫る場合や所在が分からない場合は、保管や裁判所の手続きの要否を専門家にご確認ください。
委任状も必要ですか
処分への同意と、契約などを任せる権限は別のものです。作業の連絡だけをお願いするのか、業者との契約まで代理してもらうのかで、必要な書面が変わります。詳しくは遺品整理の委任状、書き方と文例をご覧ください。
実家のこと、誰が決めますか。
実家の話し合いに、中立の一人を。
誰に確認するのか。何を残すのか。どこまで任せるのか。決めるのはご家族です。順番を整え、決まったことを書面にし、必要な専門家におつなぎするのが私たちの役割です。
同意書テンプレート(Word・別紙リスト付き)を無料でお送りします
メールアドレスをご入力ください。ダウンロードリンクをお送りします。
作成:クロフネ行政書士事務所/情報確認日:2026年9月14日。本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。当事務所は行政書士事務所です。不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続税・譲渡所得税の申告は税理士、相続人間で争いが生じている事案は弁護士の取扱業務となります。必要に応じて各専門家をご紹介いたします。
根拠と参考資料
- e-Gov法令検索 民法:251条・252条(共有)、897条(祭祀財産)、898条(共同相続)、915条・921条(承認・放棄)、939条(相続放棄の効力)
- 裁判所 相続の放棄の申述:申述先・期間・手続の案内
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AUTHOR
深沢 文敏
家族資産コンシェルジュ|行政書士(登録番号 第14130403号)・宅地建物取引士
クロフネ行政書士事務所 代表/さいたま市大宮区
一部上場企業を退職後、行政書士として独立。法務書類の作成権限を持つ行政書士と、不動産売買を媒介できる宅地建物取引士の両資格を保有。郡山市(開成・鶴見坦エリア)に居住し、マンションを所有していた経験から、地方都市の不動産が抱える課題を現場感覚で把握している。日本経済新聞・朝日新聞・NewsPicks・TBS NEWS DIGほか50媒体超に掲載。
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