実家じまいの手順を8ステップで解説|遠方の子ども向け

実家じまいの手順を8ステップで解説|遠方の子ども向け

実家じまいの手順を8ステップで解説|遠方の子ども向け

深沢文敏・家族資産コンシェルジュ・行政書士・宅地建物取引士

AUTHOR

深沢 文敏

家族資産コンシェルジュ|行政書士(登録番号 第14130403号)・宅地建物取引士
クロフネ行政書士事務所 代表/さいたま市大宮区

📰 メディア掲載 50媒体超 📚 著書 3冊 🏠 🏠 郡山5年在住・震災経験

一部上場企業を退職後、行政書士として独立。法務書類の作成権限を持つ行政書士と、不動産売買を媒介できる宅地建物取引士の両資格を保有。郡山市(開成・鶴見坦エリア)に5年間居住し、東日本大震災を現地で経験。マンションを所有していた経験から、地方都市の不動産が抱える課題や災害への備えを現場感覚で把握している。日本経済新聞・朝日新聞・NewsPicks・TBS NEWS DIGほか50媒体超に掲載。

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「実家をどうにかしないと」——そう思いながらも、何年も手をつけられずにいる方は少なくありません。理由はシンプルで、実家じまいには「決まった順番」があることを知らないまま、片付けや売却の話だけを個別に検討してしまうからです。

EXPERIENCE|この記事を書いた理由

私自身、郡山にマンションを所有していた時期があります。冬の除雪問題から、地元業者との価格交渉、売却に要した時間まで——地方都市の不動産が抱えるリアルを、書類の上ではなく肌で知っています。8ステップのうち③法務対策をあえて最初に置いているのも、「実家の凍結」を間近で見てきた経験からです。

この記事では、実家じまいを8つのステップに分解し、それぞれで何をすべきかを解説します。特に、首都圏在住で実家が郡山・宇都宮・仙台など地方都市にあり、帰省が年1〜2回程度に限られる方を想定しています。

多くの実家じまい解説記事は「親が亡くなった後」を前提にしていますが、この記事が扱うのは親がまだ元気なうちに動く実家じまいです。動くタイミングが早いほど、選択肢は多く、費用も時間も抑えられます。

ROADMAP

結論:実家じまいの8ステップ全体像

01

実家の現状把握(名義・境界・築年数)

02

家族の意向確認(親・きょうだい)

03

⚠ 法務対策(遺言・家族信託などの認知症対策)

ここが「親が元気なうち」にしかできない最重要ステップ

04

実家の査定(売却額の目安を知る)

05

家財の片付け・遺品整理

06

売却方法の決定(そのまま売却か解体か)

07

売却活動・契約

実家クローズ(近隣挨拶・デジタル資産整理など)

重要なのは、③の法務対策を④以降より先に済ませることです。親の判断能力が低下してからでは家族信託を組めず、不動産の売買契約自体が無効になるリスクもあります。片付けや売却の前に、法務面の準備を済ませておくことが、遠回りに見えて実は一番の近道です。

STEP 01-02

ステップ1:実家の現状把握(名義・境界)

最初にやるべきは、実家の「名義」と「境界」の確認です。名義が祖父母のまま変更されていないケースや、隣地との境界が未確定のまま何十年も経過しているケースは珍しくありません。これらは売却時に必ず問題化するため、早い段階で把握しておくと後工程がスムーズになります。

📄 名義確認でよくあるつまずき

登記簿謄本を取得してみると、名義人が既に亡くなった祖父母のままだった、というケースは実際に多く見られます。この状態のまま売却しようとすると、相続人全員の同意や相続登記の手続きが必要になり、想定より時間がかかります。まずは法務局で登記簿謄本を取得し、現在の名義を確認するところから始めましょう。

📐 境界確認は「資料の有無」を先にチェック

隣地との境界を示す「境界確認書」や「確定測量図」が実家に保管されているかどうかも、早めに確認しておきたいポイントです。資料が見当たらない場合、売却時に土地家屋調査士による測量が必要になり、数十万円規模の費用と数ヶ月の期間がかかることがあります。

ステップ2:家族の意向確認

親自身が実家をどうしたいのか、そしてきょうだいがどう考えているのかを確認します。ここで意見が割れることは非常によくあります。特にきょうだいが全国・海外に散らばっている場合、対面での話し合いを設定すること自体が難しく、そのまま数年放置されるケースも多いです。

意向確認の際は、「売る・売らない」という結論をいきなり求めるのではなく、まず現状を客観的なデータとして共有することが有効です。査定額や法務上のリスクを数字で示した上で話し合うと、感情的な対立を避けやすくなります。

⚠ MOST IMPORTANT STEP

ステップ3:法務対策(遺言・認知症対策)

遺言書の作成状況、そして家族信託や任意後見といった認知症対策の要否を確認します。この工程は「親が元気なうち」にしか実行できません。判断能力が低下した後に必要になるのは成年後見制度ですが、費用・期間ともに家族信託より重くなるのが一般的です。

家族信託は、親(委託者)が判断能力のあるうちに、資産の管理を子ども(受託者)などに託す契約です。これにより、将来親の判断能力が低下しても、信託契約に基づいて不動産の売却や資産管理を続けられます。一方、判断能力低下後に必要になる成年後見制度では、家庭裁判所が選任した後見人の報酬が継続的に発生し、不動産の売却にも家庭裁判所の許可が必要になるなど、手続きの自由度が下がります。

ステップ4:実家の査定

実家の売却額の目安を把握します。ここで注意したいのが、不動産一括査定サイトを利用した場合、複数の地方業者から親の携帯に一斉に営業電話がかかるケースがある点です。事情を知らない親が驚いてしまい、その後の話し合いが進まなくなることもあります。査定は「静かに」「必要な範囲だけ」知りたいというニーズに合った相談先を選ぶことが大切です。

査定の方法には、現地調査を伴わない「机上査定」と、実際に物件を確認する「訪問査定」があります。まずは机上査定でおおよその相場を把握し、売却を具体的に検討する段階になってから訪問査定に進む、という順序で進めると、遠方在住でも負担を抑えられます。

ステップ5:家財の片付け・遺品整理

築年数の古い実家ほど、家財の量も多くなりがちです。自分たちで対応する範囲と、業者に依頼する範囲を事前に分けておくと、当日の負担が大きく変わります。特に重要書類や貴金属類は、片付け作業の初日に確保し、一般的な不用品と分けて扱うことをおすすめします。

ステップ6:売却方法の決定(そのまま売却か解体か)

建物の状態によって「現況のまま売却」するか「解体して更地で売却」するかを判断します。判断材料になるのは、築年数・立地・買い手のニーズです。ここは不動産の専門知識が必要な工程のため、法務担当者と不動産担当者が別々だと、それぞれの立場からの見解がずれてしまうことがあります。

一般的に、老朽化が進んでいる建物や再建築が前提となるような立地では解体・更地売却が選ばれやすく、比較的状態の良い建物や、リフォーム需要が見込める立地では現況のまま売却されるケースが多いといわれます。ただし、解体には数十万円〜百万円単位の費用がかかるため、査定額との兼ね合いで判断する必要があります。

ステップ7:売却活動・契約

媒介契約を結び、実際の売却活動に入ります。地方都市の物件は、地元の相場観や業者とのつながりが売却スピードに影響します。媒介契約には「専属専任」「専任」「一般」の3種類があり、それぞれ販売活動の報告頻度や、複数業者への依頼可否が異なります。遠方在住の場合、こまめな報告を受けられる媒介契約を選ぶと、状況を把握しやすくなります。

ステップ8:実家クローズ(近隣挨拶・デジタル資産整理)

売却後も、近隣への挨拶や、親のスマホ・LINE・PayPayなどデジタル資産の整理が残ります。家や預金だけでなく、こうした「目に見えない資産」の整理も、実家じまいの一部として意識しておくと安心です。近隣への挨拶は、長年お世話になった地域とのつながりを丁寧に終えるという意味でも、省略せずに行うことをおすすめします。

PITFALLS

遠方に住む子どもが陥りやすい3つの失敗

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窓口が複数に分かれる

法務は行政書士、不動産は業者、片付けは別業者——と依頼先が分散すると、その都度事情を説明し直す手間が発生します。特に遠方在住の場合、電話やメールでのやり取りが増えるほど、心理的な負担も大きくなりがちです。

法務対策を後回しにする

売却や片付けを先に進めてしまい、いざ家族信託を検討した時には親の判断能力が低下していた、というケースは実際によくあります。「まだ大丈夫」と思っているうちに時間が過ぎてしまうのが、この失敗の典型的なパターンです。

🏚️

きょうだい間の合意形成を後回しにする

意見がまとまらないまま時間だけが過ぎ、実家が空き家状態で放置されてしまうケースです。固定資産税や管理費だけが継続してかかる、いわゆる「負動産」化を防ぐには、早い段階での方針共有が欠かせません。

CASE

想定シチュエーション:8ステップを踏んだ場合と、踏まなかった場合

※ プライバシー保護のため、典型的なご相談パターンを再構成した想定事例です。特定の個人を表すものではありません。

◎ ケースA

順番通りに進めた場合

首都圏在住・50代のご家族。実家は地方都市の築30年超の一戸建てで、両親は80代。まず現状把握(名義・境界)を行ったところ、名義が祖父母のままであることが判明。並行して家族の意向を確認し、母親がまだ判断能力に問題がない段階で家族信託の検討を開始。信託契約を結んだ後に机上査定を取得し、査定額と法務上の優先順位をきょうだい間で共有。片付けは重要書類を先に確保したうえで業者に依頼し、最終的に現況のまま売却。売却から実家クローズまで、窓口は一貫して同じ専門家が担当しました。

✕ ケースB

片付け・売却を先に進めてしまった場合

同じく首都圏在住のご家族。こちらは「まず片付けてから考えよう」と、名義や境界の確認をせずに片付け業者へ依頼。作業後に重要書類の一部が見当たらなくなり、名義変更の手続きに時間を要しました。さらに、売却活動を始めてから家族信託の必要性に気づいたものの、その頃には父親の判断能力に軽度の低下が見られ、家族信託を組めない状態に。結果として、成年後見制度の利用を検討せざるを得なくなり、当初の想定より手続き期間・費用ともに大きく膨らみました。

この2つのケースの違いは、法務対策を「先に」検討したかどうかにあります。片付けや売却自体は取り返しがつくことが多い一方、判断能力の低下は不可逆であるため、順番を誤ると選択肢そのものが失われてしまいます。

FAQ

よくある質問

Q

実家じまいは何歳くらいから意識すべきですか?

明確な年齢の基準はありませんが、親が70代に入った段階で、遺言や家族信託などの法務面の検討を始めておくと、選択肢を広く残せます。判断能力が十分なうちにしかできない手続きがあるため、「まだ早い」と感じる段階で動き始めることが、結果的に負担を軽くします。

Q

きょうだいが遠方や海外にいる場合、話し合いはどう進めればいいですか?

対面での話し合いが難しい場合は、オンライン会議を活用する方法があります。事前に査定額や診断結果などの客観的なデータを共有しておくと、限られた時間でも建設的な話し合いを進めやすくなります。

SUMMARY

まとめ

✅ 実家じまいには「現状把握→家族の意向確認→法務対策→査定→片付け→売却方法決定→売却→クローズ」という8つのステップがある

✅ 法務対策(遺言・家族信託など)は、親が元気なうちにしか実行できないため、他の工程より先に検討すべき

✅ 窓口が複数に分かれると、事情説明の手間と時間的コストが増える

✅ きょうだい間の意見調整は、客観的なデータをもとに早めに着手するとスムーズに進みやすい

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監修:行政書士・宅地建物取引士 深沢文敏(登録番号 第14130403号)

※ 家族信託の契約行為自体は司法書士・弁護士が行います。当事務所は家族信託の設計・契約書案の作成・公証役場との調整・不動産売却を担当し、必要に応じて提携司法書士と連携します。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断を保証するものではありません。