「うちの親は、まだ元気だから大丈夫」が危険な理由|認知症有病率データ

「まだ元気だから大丈夫」が危険な理由|認知症有病率データ

AUTHOR
深沢 文敏
家族資産コンシェルジュ|行政書士(登録番号 第14130403号)・宅地建物取引士
クロフネ行政書士事務所 代表/さいたま市大宮区
一部上場企業を退職後、行政書士として独立。法務書類の作成権限を持つ行政書士と、不動産売買を媒介できる宅地建物取引士の両資格を保有。郡山市(開成・鶴見坦エリア)に5年間居住し、東日本大震災を現地で経験。マンションを所有していた経験から、地方都市の不動産が抱える課題や災害への備えを現場感覚で把握している。日本経済新聞・朝日新聞・NewsPicks・TBS NEWS DIGほか50媒体超に掲載。
→ 実家承継ワンストップサービスの詳細を見る「うちの親はまだ元気だから、対策はもう少し先でいい」——このお気持ちはとてもよくわかります。しかし、認知症の有病率データを見ると、この「もう少し先」という判断が、実は思っているより危うい時期に差し掛かっていることが少なくありません。
EXPERIENCE|この記事を書いた理由
「うちの親はまだしっかりしているので」とおっしゃる方の親御さまの年齢を伺うと、すでに78歳、80歳ということが珍しくありません。データ上、対策の窓口が閉じかけている年齢であることを、ご本人もご家族も気づいていないケースが多いのです。数字を正直にお伝えすることが、専門家としての誠実さだと考え、この記事を書きました。
この記事では、年齢別の認知症有病率データと、「まだ大丈夫」という判断がなぜ危険なのか、そして今できる対策の考え方を解説します。
DATA
結論:認知症有病率は75歳を境に急上昇する
内閣府「高齢社会白書」によれば、65歳以上の認知症高齢者数は2025年時点で約600万人と推計されており、65歳以上の約5.6人に1人にあたるとされています。年齢が上がるほど有病率は加速度的に上昇し、特に75歳を境に傾きが急になる傾向が指摘されています。
MISCONCEPTION
「まだ元気」という判断が当てにならない理由
🗣️ 会話ができることと、法律行為の意思能力は別物
「普通に会話できているから大丈夫」という判断は、実は法律的な意思能力の有無とは直結しません。日常会話は自然にできても、契約書の内容を理解し自由な意思で判断する能力(意思能力)が既に低下しているケースは珍しくなく、この段階での契約は後から無効を主張されるリスクを抱えます。
🧠 MCI(軽度認知障害)という「診断名のつかない段階」
認知症の診断がつく前段階として、MCI(軽度認知障害)と呼ばれる状態があります。この段階では日常生活に大きな支障はないものの、記憶力や判断力に軽度の低下が見られます。診断名がついていないからといって、法律行為における意思能力が万全とは限りません。
📅 「そのうち」の間に状況は進行する
認知症は多くの場合、緩やかに進行します。「今年は大丈夫だったから来年も大丈夫」とは限らず、対策を先送りにしている間に、静かに状況が進んでいるケースも少なくありません。
WHAT'S AT STAKE
対策を先送りすると、何が失われるのか
口座凍結のリスク
判断能力の低下が金融機関に把握された時点で、預金の引き出しや解約ができなくなります。
不動産売却の道が閉ざされる
意思能力が確認できない場合、実家の売買契約が無効となるリスクがあり、成年後見制度に頼らざるを得なくなります。
家族信託・遺言という選択肢が消える
これらはすべて「本人の意思能力があるうち」にしか結べません。診断後は成年後見制度が唯一の手段になります。
WHAT TO DO
「まだ大丈夫」なうちにできること
大切なのは、「認知症になってから対策する」のではなく、「元気なうちに対策しておく」という順番です。親御さまが75歳前後であれば、遺言書の作成や家族信託の検討を始める適切なタイミングと考えられます。焦って何かを決める必要はありませんが、現状を把握し、選択肢がある段階であることを認識しておくことが第一歩です。
当事務所の実家健康診断では、名義・境界・遺言・認知症・家族信託・固定資産税・空き家・デジタル資産の8項目を無料でチェックできます。「今すぐ動くべきか」を判断する材料として、まずは現状を数値化することをおすすめしています。
CASE
想定シチュエーション:「まだ大丈夫」の判断が変わった例
※ プライバシー保護のため、典型的なご相談パターンを再構成した想定事例です。特定の個人を表すものではありません。
首都圏在住・50代のご家族。「電話で話す限り母はまだしっかりしている」と感じていましたが、帰省の際に実家健康診断を勧められ、母親(78歳)の状況を改めて整理。すると、通帳の記帳が数ヶ月止まっていたこと、同じ日用品を重複して購入していたことなど、電話では気づけなかった変化が見つかりました。診断をきっかけに、家族信託の検討を始めることになりました。
FAQ
よくある質問
親が70代前半でも対策を始めるべきですか?
有病率が低い年齢であっても、対策は早いほど選択肢が広く、費用も抑えられます。「早すぎる対策」はデメリットが少ないため、70代前半から検討を始めることは十分に理にかなっています。
認知症予防をしていれば対策は不要になりますか?
生活習慣の改善などによる予防効果は期待されますが、発症を完全に防ぐ方法は確立されていません。予防と並行して、万が一に備えた法務・不動産の対策を進めておくことをおすすめします。
SUMMARY
まとめ
✅ 認知症有病率は75歳を境に急上昇し、65歳以上の約5.6人に1人が該当すると推計されている
✅ 「普通に会話できる」ことと法律行為の意思能力は別物であり、当てにならない
✅ 対策を先送りすると、口座凍結・不動産売却の道が閉ざされる・家族信託や遺言が組めなくなるリスクがある
✅ 75歳前後は対策を始める一つの目安。早いほど選択肢は多い
家族資産コンシェルジュとしての支援内容については、実家承継ワンストップサービスの詳細もあわせてご覧ください。
監修:行政書士・宅地建物取引士 深沢文敏(登録番号 第14130403号)
※ 認知症有病率に関するデータは内閣府「高齢社会白書」に基づく概況であり、個人の状況を予測・診断するものではありません。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断・医学的判断を保証するものではありません。

