家族信託のデメリット5つ|行政書士が正直に教えます

家族信託のデメリット5つ|行政書士が正直に教えます

AUTHOR
深沢 文敏
家族資産コンシェルジュ|行政書士(登録番号 第14130403号)・宅地建物取引士
クロフネ行政書士事務所 代表/さいたま市大宮区
一部上場企業を退職後、行政書士として独立。法務書類の作成権限を持つ行政書士と、不動産売買を媒介できる宅地建物取引士の両資格を保有。郡山市(開成・鶴見坦エリア)に5年間居住し、東日本大震災を現地で経験。マンションを所有していた経験から、地方都市の不動産が抱える課題や災害への備えを現場感覚で把握している。日本経済新聞・朝日新聞・NewsPicks・TBS NEWS DIGほか50媒体超に掲載。
→ 実家承継ワンストップサービスの詳細を見る家族信託は認知症対策として有効な制度ですが、万能ではありません。メリットばかりを強調する情報も多い中、当事務所では検討段階でデメリットも正直にお伝えするようにしています。合わない設計のまま契約してしまうと、後になって家族間のトラブルにつながることもあるためです。
EXPERIENCE|この記事を書いた理由
家族信託のご相談で最も大切にしているのは、「良い面だけを伝えて契約に進める」のではなく、デメリットも含めてご家族が納得したうえで判断していただくことです。行政書士として設計に関わる中で、デメリットを理解せず契約し、後から家族間の不公平感が表面化するケースも見てきました。この記事では、その現場感覚を正直にお伝えします。
この記事では、家族信託の5つのデメリットと、それでも検討する価値がある理由を解説します。
5 DRAWBACKS
結論:5つのデメリット一覧
- 節税効果はない
- 身上監護には対応できない
- 受託者に大きな負担と責任が集中する
- 家族間の不公平感を生むリスクがある
- 設計・運用に専門知識が必要で、自己流は危険
① NO TAX BENEFIT
デメリット① 節税効果はない
家族信託は「相続対策」の一つとして語られることがありますが、相続税を減らす効果は基本的にありません。家族信託の目的はあくまで「認知症による資産凍結を防ぐこと」であり、税務上のメリットを期待して契約するものではない点を理解しておく必要があります。節税を主目的とする場合は、生前贈与や他の相続税対策と組み合わせて検討する必要があります。
② NO CARE COVERAGE
デメリット② 身上監護には対応できない
家族信託は財産管理・処分に特化した制度であり、施設入居の契約や医療同意など「身上監護」と呼ばれる分野には対応できません。身上監護が必要な場面が想定される場合は、任意後見契約を別途組み合わせる必要があります。「家族信託さえ組めば認知症対策は万全」というのは誤解です。
③ BURDEN ON TRUSTEE
デメリット③ 受託者に大きな負担と責任が集中する
受託者(財産管理を担う家族)は、信託財産を自己の財産と分別して管理し、収支を記録し続ける義務を負います。家庭裁判所の監督がない分、受託者自身の自己規律が重要になり、日々の管理を負担に感じるケースもあります。受託者を誰にするかは、実務的な負担も含めて慎重に検討する必要があります。
④ FAMILY TENSION
デメリット④ 家族間の不公平感を生むリスクがある
⚠ 最も注意すべきデメリット
財産管理の権限が受託者(多くの場合、きょうだいの一人)に集中するため、他のきょうだいから見て「なぜあの人だけが親の財産を管理するのか」という不公平感が生まれることがあります。契約前にきょうだい全員で目的と内容を共有し、納得を得ておくことが、後のトラブルを防ぐ最も重要なポイントです。
⑤ NOT A DIY PROJECT
デメリット⑤ 設計・運用に専門知識が必要で、自己流は危険
インターネット上のひな形を参考に、自分たちだけで信託契約書を作成しようとするケースもありますが、専門家の関与がない契約書は金融機関に信託口口座の開設を断られることがあります。また、契約内容に不備があると、後から意思能力や契約の有効性を争われるリスクもあります。設計段階から専門家に相談することが、結果的にトラブルを避ける近道です。
EVEN SO
それでも家族信託を検討する価値がある理由
デメリットを踏まえてもなお、家族信託は「親の判断能力が低下しても、実家の売却や生活費の管理を止めずに続けられる」という点で、他の制度にはない実用性があります。デメリットは「契約前にきちんと理解し、対策すれば回避できるもの」がほとんどです。特に④の家族間の不公平感は、契約前の丁寧な話し合いで大きく軽減できます。
CASE
想定シチュエーション:デメリットに事前対応できた例
※ プライバシー保護のため、典型的なご相談パターンを再構成した想定事例です。特定の個人を表すものではありません。
郡山市の実家を持つご家族。3人きょうだいのうち長男を受託者とする信託契約を検討していましたが、事前にZoom家族会議を実施し、契約の目的・受託者の権限範囲・定期的な報告方法をきょうだい全員で共有。契約後も、受託者から定期的に収支報告が届く仕組みを整えたことで、不公平感によるトラブルを未然に防げました。
FAQ
よくある質問
きょうだい間の不公平感を防ぐには、具体的にどうすればいいですか?
契約前にきょうだい全員で内容を共有し、受託者が定期的に収支報告を行う仕組みを設けることが有効です。第三者の専門家が同席する場で説明を行うと、感情的な対立を避けやすくなります。
受託者が先に亡くなった場合はどうなりますか?
契約書の中で「第二受託者」をあらかじめ定めておくことができます。受託者が欠けた場合の備えも、契約設計の段階で検討しておくべき重要なポイントです。
SUMMARY
まとめ
✅ 家族信託には節税効果がなく、身上監護にも対応できない
✅ 受託者に管理負担と責任が集中し、きょうだい間の不公平感を生むリスクがある
✅ 自己流の契約書は金融機関に断られるリスクがあり、専門家の関与が推奨される
✅ デメリットの多くは契約前の丁寧な話し合いと専門家のサポートで軽減できる
Zoom家族会議を活用した合意形成については、実家承継ワンストップサービスの詳細もあわせてご覧ください。
監修:行政書士・宅地建物取引士 深沢文敏(登録番号 第14130403号)
※ 家族信託の契約行為自体は司法書士・弁護士が行います。当事務所は家族信託の設計・契約書案の作成・公証役場との調整・不動産売却を担当し、必要に応じて提携司法書士と連携します。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断を保証するものではありません。

